過去の21世紀枠を振り返る(前編)

こんにちは。

本来は2022年の高校野球を振り返る記事を書こうと思ったのですが、年末にスライドさせ先に違う記事をあげようと思います。

 

今回は過去の21世紀枠を振り返っていく記事です。前編では2011年までの紹介となります。

 

21世紀枠とは

2001年から導入された選抜出場枠であり、甲子園に後一歩届かない・過疎地/少人数という困難の克服などといった学校を対象とする制度となっています。また秋大会の成績が16強(128校以上が参加する都道府県では32強)以上という条件を満たすことが推薦の条件となっています。

 

都道府県で1校を推薦

↓(12月上旬)

その中から各地区で1校を推薦

↓(1月下旬/選抜出場校発表時)

最終的に3校が21世紀枠として出場

※東日本1校/西日本1校/地区縛り無し1校

 

それでは年別に振り返ります。

 

2001年(地区推薦校)

北海道 帯広南商

東北 ◎安積(福島)

関東 稲毛(千葉)

北信越 町野(石川)

東海 常葉橘(静岡)

近畿 桐蔭(和歌山)

中国 ▲境港工(鳥取)

四国 富岡西(徳島)

九州 ◎宜野座(沖縄)

初年度ということもあり各校の推薦は手探り感も。東日本からは県内随一の進学校である安積、西日本からは後1勝で甲子園で届かなかった実力校の宜野座が選出。

 

安積(福島8強)

●1-5 金沢

宜野座(沖縄1位/九州8強)

○7-2 岐阜第一

○4-3 桐光学園

○4-2 浪速

●1-7 仙台育英

安積は強豪の金沢に初戦敗退も中盤以降は1失点と粘ってみせた。宜野座はエース比嘉の力投もあり快進撃。準決勝で力尽きたものの新枠初年度の存在感を見せつける活躍ぶりだった。

 

2002年(地区推薦校)

北海道 ◎鵡川

東北 宮城農(宮城)

関東 土浦三(茨城)

北信越 長野日大(長野)

東海 郡上北(岐阜)

近畿 彦根東(滋賀)

中国 ◎松江北(島根)

四国 ▲八幡浜(愛媛)

九州 辺土名(沖縄)

鵡川/長野日大/彦根東など後の一般枠出場校が揃う中で東日本は学校の存続危機を乗り越え好成績を残した鵡川、西日本は文武両道が評価され松江北となった。

 

鵡川(北海道8強)

○12-8 三木

●0-1 広島商

松江北(島根3位/中国初戦敗退)

●3-5 福井商

昨年の宜野座のようなインパクトは無かったものの、2校とも一般枠と遜色のない戦いを展開。鵡川は初戦で3回までに10得点の猛打を見せ道民を湧かせた。

 

2003年(地区推薦校)

北海道 ▲稚内大谷

東北 大館鳳鳴(秋田)

関東 真岡(栃木)

北信越 ◎柏崎(新潟)

東海 神戸(三重)

近畿 橋本(和歌山)

中国 ◎隠岐(島根)

四国 高知東(高知)

九州 直方(福岡)

東日本からは厳しい環境下での練習、文武両道が評価されて柏崎。西日本は離島という地理的な不利を克服し中国大会進出を果たした隠岐となった。これで島根は早くも去年の松江北に続き2校目の選出に。私立ながら未だに甲子園と縁のない最北端の地区で奮闘する稚内大谷は惜しくも補欠。

 

柏崎(新潟3位/北信越初戦敗退)

●1-2 斑鳩

隠岐(島根1位/中国初戦敗退)

●1-15 浦和学院

開幕カードに出場した柏崎は投手戦も終盤に勝ち越しを許し惜敗。翌日に登場した隠岐は初回から浦和学院の猛攻を受け大敗。地区大会進出を果たした2校だったが、2日目にして21世紀枠の戦いは終わってしまった。

 

2004年(地区推薦校)

北海道 函館中部

東北 ◎一関一(岩手)

関東 桐朋(東京)

北信越 七尾(石川)

東海 津西(三重)

近畿 耐久(和歌山)

中国 鳥取城北(鳥取)

四国 ◎八幡浜(愛媛)

九州 ▲清峰(長崎)

一関一、八幡浜は地区大会で2勝するなど一般枠と遜色のない実力が評価されての選出となった。清峰も長崎1位と実力で2校に肉薄するも惜しくも補欠。この年の5年後に全国制覇を果たした。今や強豪の鳥取城北は中国大会2勝もやはり私立には厳しい制度であることが伺える。

 

一関一(岩手2位/東北4強)

●0-6 拓大紅陵

八幡浜(愛媛2位/四国4強)

●3-6 鵡川

昨年以上に実績高い2校で挑んだがまたしても未勝利。八幡浜は2年前の21世紀枠出場校である鵡川にリードを奪えず。制度4年目にして一般枠出場校との差を感じる結果に終わった。

 

2005年(地区推薦校)

北海道 札幌藻岩

東北 ◎一迫商(宮城)

関東 二松学舎沼南(千葉)

北信越 金沢泉丘(石川)

東海 静清工(静岡)

近畿 桜井(奈良)

中国 賀茂(広島)

四国 ◎高松(香川)

九州 ▲佐賀西(佐賀)

地域密着型の学校という点での評価が高かった一迫商、県内随一の進学校であり地域活動にも精力的な高松が選出。佐賀西は九州8強と実力的には申し分なかったが補欠に回った。

 

一迫商(宮城2位/東北8強)

○5-2 修徳

●2-19 天理

高松(香川2位/四国初戦敗退)

●2-6 宇部商

21世紀枠として3年ぶりの初戦突破となった一迫商だったが次戦で天理に序盤から12失点とワンサイドゲームに。高松は中盤以降に引き離され初戦敗退と「一般枠との実力差を縮める」年にはならなかった。

 

2006年(地区推薦校)

北海道 釧路江南

東北 光南(福島)

関東 ◎真岡工(栃木)

北信越 ◎金沢桜丘(石川)

東海 ▲成章(愛知)

近畿 県和歌山商(和歌山)

中国 米子西(鳥取)

四国 室戸(高知)

九州 ▲徳之島(鹿児島)

地区内1都7県でレベルの高い関東から未だに選出が無かった事、県レベル上昇に貢献したとして真岡工。文武両道かつ野球部員の学校活動貢献なども目を引く金沢桜丘が当選。現行の21世紀枠では東西で必ず1校が選出される仕組みなので、西日本の選出0はかなり珍しい。室戸は翌年の選抜に一般枠として出場し8強入りの大躍進を見せた。

 

真岡工(栃木2位/関東8強)

●1-9 PL学園

金沢桜丘(石川1位/北信越4強)

●3-4 愛知啓成

両校とも後1勝で一般枠という2004年に並ぶ戦績だったが、その時と同じく初戦敗退に。真岡工はエースがマエケンPL学園に投打で完敗。金沢桜丘は9回に勝ち越すも裏に逆転サヨナラ負けという悔しい結末になった。

 

2007年(地区推薦校)

北海道 ▲釧路江南

東北 上山明新館(山形)

関東 ◎都留(山梨)

北信越 武生商(福井)

東海 ▲成章(愛知)

近畿 ☆県和歌山商(和歌山)

中国 華陵(山口)

四国 高松一(香川)

九州 ◎都城泉ヶ丘(宮崎)

噴火の被害に見舞われた山間地域の学校ながら関東大会進出の好成績を残した都留。部員12人と少人数ながら継続して県内で好成績を残し続けている都城泉ヶ丘が選出。成章は異例となる2年連続の補欠入り。選考後に行われた一般枠の発表では近畿大会初戦敗退の県和歌山商が8強の学校を上回る評価を得て選出された。

 

都留(山梨2位/関東8強)

●2-3 今治西

都城泉ヶ丘(宮崎1位/九州8強)

○2-0 桐生第一

●1-4 大垣日大

共に後1勝で一般枠での選出という構成は昨年と同じ。都留は惜しくも終盤に逆転負けしたが、関東大会で都留を破った桐生第一都城泉ヶ丘が「敵討ち」。この選抜で準優勝となった大垣日大に対しても接戦に持ち込むなど見せ場を作った。

 

2008年(地区推薦校)

北海道 武修館

東北 ▲五所川原農林(青森)

関東 ◎安房(千葉)

北信越 富山中部(富山)

東海 ◎成章(愛知)

近畿 ▲畝傍(奈良)

中国 ◎華陵(山口)

四国 富岡西(徳島)

九州 長崎商(長崎)

選抜の記念大会という事もあり21世紀枠の枠数が見直され常時3枠に。また3ブロック「北海道・東北・関東」「北信越・東海・近畿」「中国・四国・九州」から1校ずつ選出する制度に改正された。人間教育の面が評価された安房は3年連続となる関東からの選出。成章は3年連続東海推薦、華陵もまた2年連続中国推薦だが2校とも近年の好成績が評価され選出となった。この年で未選出地区は近畿のみに。

 

安房(千葉2位/関東初戦敗退)

○2-0 城北

●3-4 宇治山田商

成章(愛知4位)

○3-2 駒大岩見沢

●2-3 平安

華陵(山口1位/中国4強)

○1-0 慶応

●1-10 天理

初日から安房と成章が登場し勝利。これに続くように華陵が関東大会準優勝の慶応に完封勝ちし3校初戦突破を果たした。後にも先にも21世紀枠の全校初戦勝利はこの年のみである。成章は久々の地区大会未出場校だったが、エース小川(ヤクルト)を擁し守り抜く野球を甲子園でも見せた。ただ好調な年であっても例年通りの打力不足で、エースが崩れるとそのまま大差という危うさは払拭し切れず。

 

2009年(地区推薦校)

北海道 北海学園札幌

東北 ◎利府(宮城)

関東 ▲身延(山梨)

北信越 村上桜ヶ丘(新潟)

東海 名張桔梗丘(三重)

近畿 ◎彦根東(彦根)

中国 呉宮原(広島)

四国 ▲土庄(香川)

九州 ◉大分上野丘(大分)

更なる制度の改良として東西で1校、残る地区から1校を選出するという現行の制度がこの年に確立した。一般枠まで後1勝だった利府、文武両道の古豪である彦根東が東西で選出。最後の1枠はこちらも文武両道で評価された大分上野丘となった。

 

利府(宮城1位/東北4強)

○10-4 掛川西

○2-1 習志野

○5-4 早稲田実

●2-5 花巻東

彦根東(滋賀2位/近畿初戦敗退)

●4-5 習志野

大分上野丘(大分2位/九州初戦敗退)

●3-7 箕島

利府は宜野座以来となる選抜4強(この年以降に2勝した高校はない)。エース塚本を中心に打でもビッグイニングを作るなどチーム力の高さを感じさせた。彦根東は悔しいサヨナラ負け、大分上野丘は中盤で大差を作られたが利府の快進撃で21世紀枠が再評価される流れとなった。

 

2010年(地区推薦校)

北海道 武修館

東北 ◎山形中央(山形)

関東 水戸桜ノ牧(茨城)

北信越 ▲新潟(新潟)

東海 刈谷(愛知)

近畿 ◉向陽(和歌山)

中国 ▲防府(山口)

四国 ◎川島(徳島)

九州 長崎商(長崎)

私立の台頭が目立つ県内において地元出身者の活躍が評価された山形中央。過疎化の地域で好成績を残した川島が東西で選出。最後は甲子園連覇の名門校である向陽が久々の甲子園出場となった。新潟や刈谷などの進学校もいたが今後の推薦に期待したい。

 

山形中央(山形2位/東北8強)

●4-14 日大三

川島(徳島3位/四国8強)

●2-3 大垣日大

向陽(和歌山2位/近畿初戦敗退)

○2-1 開星

●1-3 日大三

対戦相手である日大三は選抜準優勝、大垣日大は選抜4強と振り返ればくじ運が厳しい戦いとなった。その中で向陽は中国王者の開星に勝利し話題となった(敗戦後の開星監督が末代までの恥という発言を残した)。これは21世紀枠は一般枠と実力的に差があるという事を念頭に置いての発言だろう。次の試合で向陽は敗れたものの強力打線を3失点に抑え込み「実力の高さ」を証明してみせた。

 

2011年(地区推薦校)

北海道 ▲遠軽

東北 ◉大館鳳鳴(秋田)

関東 大田原(栃木)

北信越 ◎佐渡(新潟)

東海 松阪(三重)

近畿 守山(滋賀)

中国 ☆総合技術(広島)

四国 ◎城南(徳島)

九州 ▲西都商(宮崎)

模範的な活動が評価された佐渡、学校生活において部員がリーダーシップを発揮している城南が東西で選出。そして好成績を残した大館鳳鳴が最後の選出となった。落選した総合技術はその後の一般枠で中国3枠目として選出。

 

佐渡(新潟2位/北信越初戦敗退)

●1-8 智辯和歌山

城南(徳島1位/四国初戦敗退)

○8-5 報徳学園

●2-7 鹿児島実

大館鳳鳴(秋田1位/東北初戦敗退)

●0-8 天理

3校とも初戦が近畿の強豪と去年に続きくじ運に泣かされた。佐渡大館鳳鳴は完敗だったが城南は注目エースの田村(西武)を打ち崩し全滅を阻止。次の鹿児島実も後の西武の投手(野田)と対峙したが攻略できず。全体を通して投手力を発揮しきれなかった感が残る。

 

次回は2012年からの紹介になります。